◆ログホラ・ウェンズディ16

エリッサ

 皆様こんにちは、「ログホラ・ウェンズディ」担当のエリッサです。毎週水曜日に更新の「ログホラ・ウェンズディ」の進行とTwitterでの告知を受け持っております。初めての方も、すでにお馴染みの方もよろしくお願いします。

 「ログホラ・ウェンズデイ」は、『ログ・ホライズンTRPG』をより楽しんでいくためのさまざまな情報をお届けして、週末のログホラTRPGライフを盛り上げようというサポート企画です。毎回、データの紹介記事やお便りの紹介などさまざまなコーナーをお届けします。
 皆様からのご意見もどんどん取り入れて、一緒に盛り上げていきたいと考えておりますので、応援をよろしくお願いします。

 サマーフェルで盛り上がった熱気もそのままに、8月がスタートです。昼ともなれば影はほとんどなく、照り付ける太陽の厳しさは例えようもありませんね。暑さのあまり倒れる事もあるとのことです。皆様もくれぐれもお気を付けください。

 それでは今回は「デザイナーズレター」をお送りします。早速参りましょう。

◆デザイナーズレター

 タイトルどおり開発チームからの情報を発信するコーナーとなっております。今回のお題は「シナリオの難易度について」です。それではご覧ください。

皆さんこんばんは(更新が19時なので便宜上夜ということで)。
LHZ開発チームです。

サマーフェルが終わって、いよいよ8月が始まりました。
夏休みに入った方も居るんでしょうかね?うらやましい事です。じゃんじゃん遊びたいですよね!
先日リリースした「天秤祭の勇者たち」を遊んだという報告も随分ありますし、新しくルールブックを購入されたという声もまだまだ続いてるようで有り難い事です。

さて今回のテーマは「シナリオの難易度について」です。
シナリオは同じであっても、プレイグループによって経験の違いなんかはかなり大きいものです。
そういった場合でも相応の手ごたえを感じてもらうための仕組みについてがテーマとなります。
それでは早速はじめましょう。

◆LHZにおけるセッションの難易度

 発売から4ヶ月が経とうとしていますが、いくつかのセッションレポートをいただき、開発チームは夏の喜びに浸っています! 皆さんのセッショングループのPCはランクアップを経験されましたか? 「ログ・ホライズンTRPG冒険窓口」におけるCR2以上のキャラクターの割合は33%を突破しました。CR1でお試しキャラを作って実験をする需要を合わせて考えますと、この数値はかなり高いと開発チームは考えています。
 もちろん統計を見ていても、CRもさまざま。クラスや種族、取得している特技もさまざまです。発売してからもそれなりに月日が経過した今、プレイグループごとの多様性はどんどん大きく、幅広くなっている頃でしょう。それは今後も拡大していくことは明らかです。あるシナリオにある〈冒険者〉グループが挑戦した場合、簡単に全ての敵を倒すことができるのだが、同じシナリオに別の〈冒険者〉グループが挑戦したら全滅してしまった――そんな光景も次第に増えていくことでしょう。

 それはもちろん(使いにくいシナリオ、ルールである)という意味で問題なのですが、一方でセッショングループや皆さんのPCが多様になったという意味で豊かなことでもあります。
 セッションにおいてPCたちに適切な難易度の挑戦を提供するのは大事な事です(なんといってもPCは〈冒険者〉で彼らは「冒険」をするのですからね!)しかしTRPGにおける戦闘やミッションの難易度調整は、むかしから職人的な技術や経験が必要であるとされてきました。確かにその側面は存在し、否定しがたいのも事実です。

 あるシステムで何回も遊んだユーザーであっても広いユーザーに向けてデータ調整を行うのはとても難しい作業です。しかし、我々デザイナーとディベロッパー。そしてGMが協力すれば、この難題にも一定のサポートができると私たちは考えています。

 LHZには「難易度」という概念があり、この仕組みはまさにシナリオのバランスをセッションごとに調整することを目的としています。
GMは、レギュレーションの発表(P240)の際にシナリオに記載されている難易度からひとつを選択し、シナリオに記載されている難易度ごとの記述を適用しながらセッションを進めていくとされています。難易度の記載は下記のようになっているはずです。

難易度レギュレーション
イージーPC全員の【因果力】+1
ノーマルボーナスなし
ハードGM用【因果力】+PC人数と等しい数

 PC/GMの【因果力】の数によりセッションの難易度を調節しようというのがこのシステムであり、同じシナリオを用いながら、様々な強さの〈冒険者〉パーティーが、歯ごたえのある冒険を楽しめるようにしようという目的があります。
しかしこの仕組みは『ログ・ホライズンTRPGルールブック』では十分に説明されているとは言えません。シンプルな運用については上記の通り説明されているものの、そのシステムの背景にあるデザイン上のポリシーや、実運用の可能性についてはページの都合もあり割愛されたという経緯がありました。
 今回は「難易度」に対するアプローチを、ディベロッパーとGMの両方の側から解説し、開発側の取り組みも併せてリリースしてゆきます。

◆ディベロッパーから難易度へのアプローチ

 三つの方向性の中から、まず最初にシナリオ、エネミー、プロップ、エンカウント配置の作成(ディベロップ)について話していきましょう。

 「難易度」に関わる部分におけるディベロッパーはまずエネミーやプロップなどのパーツを作るディベロッパーとシナリオディベロッパーに分かれます。ディベロッパーが難易度について考える場合、重要なのは「一貫性」です。
 一貫性とはこの場合「あるCRのエネミーやプロップやシナリオはほぼ同じ強さ(=手ごたえ、難易度)である」ということです。もちろん戦闘では同じエネミーであっても戦場のプロップや、エネミー同士の組み合わせや戦術によって発揮できる実力が違います。しかし、そうであっても基準となるべき強さというものはあり、そこに一貫性があるというのは「再利用性」に大きな影響を与えます。

 二つめのキーワード「再利用性」とは「あなたが作ったデータが、別のディベロッパーにも使ってもらえる」ことを指します。あなたがディベロッパーであり、かつあなた自身がGMである場合、あなたの作ったディベロップデータはあなたが最も上手に使うことができるでしょう。しかし公にデータを公開するのであれば「再利用性」が重要になります。
つまり、あなたがエネミーやプロップ、シナリオのディベロッパーである場合、あなたの作るデータは一貫性と再利用性が重要になります。それをどのようにして獲得するかといえば

 これがLHZにおけるエネミー、プロップ、シナリオデザインの基本方針です。
あなたがディベロッパーであれば、ぜひこの観点からデザインをしてみてください。そしてデータを公開してみてください。適切なデータはあなた以外のディベロッパーのもとでも活躍できるはずです。そんなリリースはシーン全体をハッピーにしてくれますよ!

 さてそのデザインについてですが、三番目のキーワード「透明性」というものが登場します。基本方針を理解し賛同しても、ヒントがなければデータデザインは難しいでしょう。開発チームはディベロッパーを支援するために「透明性」を確保する義務があると考えています。
 エネミーデザインについての基礎資料を公開したのは、この「透明性」が重要だと考えているからですね。
プロップについても追加データもしくは基礎資料の公開準備を進めています(これについてはもうしばらく時間をいただくことになるでしょう)。

 シナリオ側については、今はシンプルに「シナリオの対応CRをきめて明記する」「登場するエネミーやプロップは対応CR以下にする」ことを守ればいいでしょう。
 PCの人数対応については、PC4人であれば同じCRのエネミーを4体ぐらい配置するのが適当です。PCが5人の場合は1.5倍、6人の場合は2倍くらいが適当でしょう。

 難易度選択肢についてはノーマルを基準としてボーナスなしとしましょう。イージーはPCそれぞれに初期配布【因果力】1点とすればいいでしょう。ハード以上の場合などは、「ハードの度合い1ごとにGM用【因果力】+PC人数と等しい数」だとデザインすれば多くの場合問題ありません。

 (開発チームでの愛称は、ハード(1)、ベリーハード(2)、ナイトメア(3)、ファナティック(4)、インフェルノ(5)です) そのほか、ミッションの目標となるカウンター数などに調整が必要な場合もあるでしょう。

◆GMから難易度へのアプローチ

 「セッションの難易度決定」(P366)にあるようにプリプレイの「レギュレーションの発表(P240)」においてGMは難易度を決定することになります。 「難易度はセッションを適度な難しさで遊ぶために用意されたルールのひとつであり、難易度の違いで獲得できる「ログチケット」や報酬が変わる事はない」ことを念頭に適切な難易度を選んでください。

セッション中難易度の運用は、シナリオに各難易度毎に変化する部分があれば記載に従いましょう。目標とするカウンター数の上下などで記載が変化するようになっていることが多いので、対応は難しくありません。

 難易度がハード以上の場合、多くの場合GM【因果力】が得られるというシナリオ記載があるでしょう。高難易度においてGMは「GM因果力」というリソースを手に入れることができるわけです。
 この「GM因果力」はプレイヤーと同じように利用することができます。一般的な難易度の場合、ハードで+3~6点、そこからさらに難易度を1段階上げればさらに同じ程度の「GM因果力」が入手できます。

 LHZにおいて判定の数値は固めに(つまりCRとの相関が強めに)デザインされています。戦闘を含む判定の成功率は30%~70%がほとんどです。 「GM因果力」を戦闘に投入した場合、[命中判定]にせよ[防御判定]にせよ20~30%程度の変動が起きることになり、これは判定結果に大きな影響を及ぼします。「GM因果力」は強力なリソースなのです!(全く同じ意味でプレイヤー側が用いる因果力も強力なのですが……)。
 とはいえ、セッション中のGMはやることが多いので5点以上の「GM因果力」を持っていても持て余してしまう事も多いでしょう。判定だけを難しくしても(例えばあらゆる攻撃を回避するモンスターなど)プレイヤーのストレスは大きくなってしまいます。

 そこで、今回のデザイナーズレターでは「GM用EXパワー」をいくつか公開します。
 これらの「GM用EXパワー」は「GM因果力」をコストに、シナリオや戦闘の難易度に干渉します。 例えば以下のような形です。

《エネミーHP強化》_EXパワー_[GM][準備]_ブリーフィング_判定なし_単体_至近_本文_EXパワーのコストとして【因果力】1点を消費する。対象の【最大HP】を+[CR×3+10]する。このEXパワーはコストを支払う限り、同じタイミングで繰り返し使用してもよい。

《配下ノーマルエネミー追加》_EXパワー_[GM][準備]_ブリーフィング_判定なし_本文_至近_本文_EXパワーのコストとして【因果力】3点を消費する。次のシーンに登場する、「通常エネミーを配下として配置する能力を持つエネミー」のみを対象にできる。対象が配置可能な通常エネミーの数を+1する。このEXパワーはコストを支払う限り、同じタイミングで繰り返し使用してもよい。

《強制移動無効》_EXパワー_[GM]_本文_判定なし_単体_至近_本文_EXパワーのコストとして【因果力】1点を消費する。対象が強制的な移動の対象となったときに使用する。対象への強制的な移動は効果を発揮しない。

 開発チームでは、以下のURLでGM用汎用EXパワーをリリースします。

 GM用汎用EXパワー

 これらのEXパワーを使用することで、再利用性の高いシナリオを、そのセッションの参加者に合わせた難易度に調整することができるでしょう。これらはあらゆるシナリオに(それこそルールブックに掲載の「〈小牙竜鬼〉の潜む森」であっても)適用することが可能です。
 GMは手元に多くのGM因果力がある場合、数点を残してGM用EXパワーにつぎ込んでしまって良いでしょう。クライマックスの戦闘などでボスが使う最低限の「GM因果力」はボスの出現とともに供給されるからです。エネミー、特にボスの多くは〔因果力〕条件により強力な攻撃を打ち出すこともできますが、そのボスが所持する「GM因果力」で、ボス特技の因果力コストは賄えるようにデザインされています。

◆さいごに

 「適切な難易度」はセッションの緊張感や楽しさを保つために重要な要素です。そのセッションの楽しみのみならず、それは未来のセッションの楽しさも左右します。
 エネミーデータの軍拡や、ガイドラインより高いCRエネミーの導入、それに伴う財宝の増加などは、長期的に見た場合にPC収入をデザインされたカーブから上方に逸脱させるため、PCはさらに強化されてしまいます。その対応のためにさらにエネミーの戦闘能力を高める、というスパイラルは、シナリオの再利用性を損なうと言えるでしょう。
  今回リリースしたGM用EXパワーは、ディベロップされたデータの再利用性を確保しつつシナリオの難易度調整を行い、さまざまなプレイグループに適切な挑戦を提供するための「難易度システム」のステップ2にあたります。みなさんが多くのセッションを繰り返してくれたおかげで、このフィーチャーを予定より早くリリースすることができました。

 「おれたちゃ強いぜ無敵だぜ」「弱いゴブリンいじめはこりごりだ!」というパーティーにはぜひハードな冒険をプレゼントしてあげてください! 英雄たる〈冒険者〉が激しい戦いを繰り広げるのはセッションの大きな楽しみでもあるはずです。

 それでは皆さん、良いLHZライフを!


◆NextWeek

 さてそれでは今週の「ログホラ・ウェンズディ」はこれにて終了です。
 少し複雑な話題だったようですが、皆様のディベロップ活動をエリッサは心より応援しております。
 来週は「イントゥザセルデシア」をお送りする予定です。
 起きてから寝るまでの全てを姫さまに捧げるエリッサですが、冒険者の皆さまにおいてはなつやすみなるものが存在するとか。そんな長いお休みのお供には是非LHZをどうぞ!

 担当のエリッサでした。


© Touno Mamare 2014