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ドレッド・パックの新事業 《どれっどぱっくのしんじぎょう》
「だぁぁぁぁもう! 引っ越してぇぇぇぇっ!」
 アキバの大通りから離れた二階建ての廃墟。蔦に覆われ、半ば崩れたまま修復の手も及んでいないその建物に、名物ギルド〈ドレッド・パック〉の頭目スマッシュの声が響いた。
 もはや恒例となったその騒ぎに何事かと駆け寄る大男のカツオ丸はおろおろするばかり。おっとり刀で顔を出した赤毛の娘リコピンはすでに慣れた様子でツッコミを入れ沈静させる。
「はいはい。それで今度はどうしたのさ? まぁ、大体想像がつくけど」
 今使っているこの廃墟は〈天秤祭〉の少し前に不法占拠して住み着いている物件だ。〈大災害〉当初のPK行為によりアキバの住人に顔向けしづらい心境の彼らには丁度良い場所だったが、それでも廃墟は廃墟、住心地は決してよいとはいえない。
 サブ職〈大工〉であるストロガノプの手で少しずつ補修しながらすごしてきたが、さすがに限界を感じた結果が、冒頭の叫びというわけである。
「だからって、引っ越すにしてもリフォームするにしても先立つものは必要だよ?」
 腕を組んで悩むリコピン。首をひねって考えるふりをするカツオ丸。速攻で思考を放棄したスマッシュは考える担当に話を丸ごと投げつける。
「おいガノプー、何か手は無いか?」
 いつの間にか四人目のメンバーが部屋の中に姿を現していた。
 室内だというのにフード付きローブ姿のストロガノプはギルマスの要請に案を捻り出す。
「そうだね。こういうのはどうかな?」

 ストロガノプが提案したのは「中間食材の専門店」だった。
 現在、この〈セルデシア〉では手料理することで味のある食べ物を作り出すことができるのだが、そのためには一から食材を調理していかねばならないため、非常に手間暇がかかる。特にコンソメスープや、メレンゲ、パンやピザの生地、各種ソースなど、ゲーム時代には〈中間素材〉と呼ばれていた加工食材たちは、さまざまな料理で必要となる一方で、作成に長時間の集中や力仕事が必要なものが多い。料理の作成時にこれらを用意するのは〈料理人〉にも結構な負担となる。
 そこで、これら料理の際に使用頻度が高い、加工済み食材を作って売ってみたらどうだろう、というのがストロガノプの提案なのだ。

「なるほどな。けど、中間食材って言っても様々だろ、何にするよ?」
「アタシは〈料理人〉じゃないから作れないけど、トマトソースの作り方なら教えてあげられるよ」
 話を進めるスマッシュの問いに食いついて来たのはリコピンだ。
「まずはトマトピューレだけでも商品としては充分だけどさ。トマトソースにも色々バリエーション欲しいよねぇ。唐辛子を効かせたアラビアータ。挽肉と刻んだ香味野菜を足してボロネーゼ。オレガノを加えたマリナーラ。チーズと豚の塩漬け肉が入ったマトリチャーナ。っと、忘れちゃいけないトマトケチャップ!」
 思い出すのは、〈クレセントバーガー〉に使われていたケチャップの味だ。
「〈三日月同盟〉に頼んで、レシピ教えてもらえないかなぁ」
「俺は、出汁の素が良いと思う」
 実家が乾物屋というカツオ丸も、この手の話には一家言ある方だ。
「前に、〈ラーメン探究部〉の活動で、ニンジンが魚介出汁を開発してたのを味見したんだが、あれは良いものだった」
「あぁ、あのサファ節黄金スープ!」
「よーし、じゃあ一丁〈三日月同盟〉に協力を呼びかけてみるか!」
「そうだね。アタシらすっかり土下座にも慣れたし、善は急げだよ!」
「そこは自慢するところじゃ無いと思うが……」
 やると決めたらフットワークが軽いのが〈ドレッド・パック〉の良いところだ。
 ドタバタと駆け出す仲間たちを追いながら、ストロガノプはマリエールに念話を入れるのだった。

 後日、〈三日月同盟〉からレシピの提供を受け、中間素材専門店〈ドレッド・パック屋〉は開店する。
 その品目の中には、居合わせたセララの強い推しにより豆乳マヨネーズが加えられていた。