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実録てとらちゃんアイドルデビューへの道 《じつろくてとらちゃんあいどるでびゅーへのみち》
〈エルダー・テイル〉における〈アイドル〉とは特殊な経緯――ヤマトサーバーを運営する〈F.O.E〉とあるアイドルグループとのタイアップ企画で作られたものの、実装開発中にアイドルグループのスキャンダルが発覚、企画が白紙となったままサブ職業だけが中途半端な形で実装された――を持つサブ職業である。
このエピソードは、実装当時にアイドルを目指した、とあるアイドル候補生たちの伝説だ。

実装までの経緯にトラブルはあったものの、バージョンアップ先行情報でこのファンタジーとはかけ離れた風変わりなサブ職業に期待するプレイヤーたちは、転職クエスト開放日を今か今かと待っていた。
そして迎えたクエスト実装の日、候補生たちに知らされた転職条件は「ヤマト全国各地に設置された〈お立ち台〉を占有し、〈歌う〉〈ダンス〉などのエモートを行うことで一定以上の得点を得られれば1ヶ所分合格。そしてこれを10ヶ所以上の〈お立ち台〉で成功させる」というものだった。
これだけなら転職条件としては簡単な部類だ。余談だがMMOに於いては、どんなに面倒であろうと一定時間をそれに費やせばクリアできるクエストというのは簡単であると評されることが多い。また、このクエストの場合は〈都市間転送ゲート〉〈妖精の輪〉を利用可能であれば初期製作キャラクターでも転職が可能だという条件がさらに「簡単」という評価を確定させた。
しかし、このクエストには更なる仕様が追加されていたのである。「10ヶ所以上の〈お立ち台〉で~」というのは最低限のクリア条件だったのだ。その場合には転職と同時に手に入る称号(実績)が「駆け出しアイドル」に、〈お立ち台〉のクリア数が増えるに伴って称号が豪華に立派になっていくという段階評価仕様だったのである。さらに全ての〈お立ち台〉――その数実に100ヶ所!――でエモートによるパフォーマンスを成功させてクリアすると、最高の称号〈銀河系アイドル〉が入手できる、という仕様が追加情報として開示された。

いわゆるやりこみ勢ゲーマーにとって、「称号(実績)コンプリート」や「100%クリア」といった目標は「達成して当たり前」の餌である。我らがアイドル候補生、てとらちゃんがこの情報を聞いて〈お立ち台〉コンプリートを目指すのは自明であったといえるだろう。
そして、彼女(?)の最高のアイドルデビューのための日々が始まった!

まずは〈お立ち台〉の場所を探さなければ話にならない。ネットの掲示板や各種情報サイトに張り付いて、〈お立ち台〉の場所を探す一方、自分でも情報のないエリアを探索し、情報を共有していく。(ちなみにてとらちゃんはテスト期間が重なって睡眠時間が危うかったのだが、涙目になりつつ若さで乗り切った)。
てとらちゃん、そして全国の顔も知らない候補生たちの努力の甲斐あって、実装から2週間もするころには全国の〈お立ち台〉設置地点が明らかになっていた。
しかし、その設置場所は一筋縄ではいかないものであった。ヤマトの各都市や街などに設置されたものは簡単にアクセス可能なのだが、その一方で過疎地や辺境、高山の頂上、高レベルモンスターが大量に徘徊する危険地帯の中など「なんでこんな場所に……」という場所に設置されたのも少なくなかったのである。
これは〈F.O.E〉社側による地域ごとのイベント・コンテンツ密度の調整や、過疎地域へのプレイヤー誘導という方針によるものとされているが、実際のところは実装直前のスキャンダル騒動などの影響を受け、細かい調整をしないままに実装されてしまったというのが実情だったようだ。おかげでプレイヤーの立場から見れば、まず〈お立ち台〉を見つける・たどり着くところから難関であるという状況になってしまったのだ。

ともあれ、お立ち台の場所が判明したことでてとらちゃんも各地をめぐる実際の活動に移る。都市部の〈お立ち台〉は最初に終わらせてしまい、フィールドやダンジョンに設置されたものへの挑戦が本番だ。
しかし決意を新たにしたてとらちゃんには、数多くの試練が待ち構えていたのだ。
〈精霊山〉山頂に設置された〈お立ち台〉の周辺には凶暴な〈鷲獅子〉や〈巨大鷲〉が巡回しており、無防備に〈お立ち台〉に立ったプレイヤーは四方八方から嘴と爪で突かれることになる。フレンドの〈武闘家〉がモンスターたちのターゲットを取り、周囲を引き回し(いわゆるカイティング)ている間にクリアしたが、一歩間違って〈武闘家〉が落とされればその瞬間全ての敵が〈お立ち台〉に群がり大神殿送りになっていただろう。
フィジャイグ地方最西端にある〈時の眠る島〉は、まずそこにたどり着くまでに海上の長距離移動があり、しかも途中で海棲恐竜や周囲の翼竜に船が沈められてしまえば、これまた〈シュリ紅宮〉の大神殿からやり直しである。数時間かけて慎重に島から島へと渡っていくしかなかった。
こうして様々な試練を乗り越えてステージを巡るてとらちゃんのもとに新たな知らせが到着する。実は「各地のお立ち台には高得点を取りやすいエモート(およびその組み合わせ)がある」ことが判明してしまったたのだ。このため攻略と平行してクリア済みの〈お立ち台〉でハイスコア更新したり、情報のない〈お立ち台〉でのエモート調査(これは後進のアイドル候補生のためでもある)も行なうことになってしまった。

中でも最大の試練は、イズモ地方に存在するレイドゾーン〈アラガミの闘技場遺跡〉、その戦場ど真ん中に設置されていた〈お立ち台〉攻略だった。
〈アラガミの闘技場遺跡〉でのレイド自体は既知のコンテンツであり、すでに攻略法も確立されていたものだったが、大規模戦闘の最中に〈お立ち台〉を占有、エモートを行なう、となれば話は別である。そもそもの話、てとらちゃんのメイン職業である〈施療術師〉をはじめとする回復職は、ただでさえ戦闘中多忙を極める。仲間の回復タイミングや位置取りなど、慣れたレイドであろうと集中が必要とされるのだ。そこに〈お立ち台〉の上という位置取りの制限と、「エモート中には魔法や特技の実行は不能」という制限が加わるわけで、クリアは困難を極めるといっても過言ではなかった。さらにいえば、レイドがクリアできなければ、たとえ〈お立ち台〉上でのパフォーマンスを成功させてもノーカウントになってしまうのだ。

ここまで厳しいならば、この〈お立ち台〉を放棄して別の場所でクリア条件を満たせばよいかもしれない、だが「全ての〈お立ち台〉でパフォーマンスを成功させ最高の称号を手に入れる」ためにはこのレイドのクリアが不可欠なのである。
てとらちゃんもメンバーを募集し、このレイドのクリアに挑むが、既知コンテンツで戦利品に目新しさがないこと、ヒーラーがレイド中に行動の制約を受けることなどで攻略は難航した。特に〈お立ち台〉を使うのはてとらちゃんひとりとはいえ、ヒーラーの動きが制限されるのは影響が大きい。回復タイミングにズレが発生することで、耐えられるはずの攻撃で耐えられず失敗――というパターンにはまり、勝てるはずのレイドで勝てない。数度の挑戦と失敗を経て、メンバー自体も集められなくなってしまった。

しかしこの状況でもてとらちゃんは絶対にあきらめなかった! 同じ状況のプレイヤーで集まればと、SNSを使って同じくアイドルを志すプレイヤーを探し、〈アラガミの闘技場遺跡〉クリアのためのレイドチーム〈キラキラ☆十二星(きらきらすたーず)〉を結成、改めて攻略に挑んだのだ!!
このレイドで重要なのは全員の行動の最適化。敵の行動タイミングを知り、戦闘と〈お立ち台〉でのパフォーマンスを両立させることだと考えたメンバーたちは、これまでのレイドクリアの動画を繰り返し鑑賞してボスの行動パターンを学習すると同時に、チーム全員でレイド会場に突入し、「どのタイミングなら〈お立ち台〉パフォーマンスを行なえるか?」の実地検証を週末ごと(ときには平日にも)繰り返した。
そして、数週間にわたる「強化合宿」を経て、アイドル候補生12人+そのフレンドたち(通称:親衛隊)で組織されたレイドチーム〈キラキラ☆十二星〉が、最高のアイドルデビューを目指してレイドに挑んだ。強化合宿を経てなおクリアは至難の業だったが、何度かの失敗を経て、ついに最初のクリアが達成された。疲労と達成感でチーム全員が号泣することになり、深夜近くだったこともあっててとらちゃん含む15名ほどは家族に叱られたという。

なお、感動の初クリアのあともアタックは休日をはさみつつ、数週間にわたって続けられた。失敗を含め、候補生全員がクリアのフラグを立てるまでのアタック総数は十数回に上る。レイド中に候補生全員がパフォーマンスをやり切れる時間はなく、また、一度クリアしたとはいっても、その後毎回確実にクリアが保証されるわけでもないからだ。
だが、慣れが出てきた後半では戦闘行動に加えて口頭でのMCを交えたパフォーマンスを行なうプレイヤーが出てきたり、それに同じく口頭で合わせる候補生、オタ芸を交える親衛隊と、(レイドボスおよびその配下を観客に見立てて)実際のライブさながらの光景が繰り広げられていた。それどころか最後のクリア者(他メンバーの順番を譲ったてとらちゃんだ)が出た後、もうクリアする必要がないレイドに「あんこーるいってみよ~う!!」の一言で再突入してしまったほどだ。完全に手段と目的が逆転していたが、チームのメンバー全員がかつてない熱と一体感を感じていた

長かったレイドが終わり、その後はそれぞれの未クリアの〈お立ち台〉を攻略(候補生たちはもはやツアーや公演と呼称していた)して、てとらちゃんたち〈キラキラ☆十二星〉はアイドル候補生を卒業。見事にアイドルのサブ職業と、輝かしい〈銀河系アイドル〉の称号を手に入れたのだった!!
後日、このことは一部のプレイヤーコミュニティでそれなりにニュースになり、このままアイドルギルド立ち上げか? とも噂されたが、クリア達成から1週間後には電撃解散レイド(ライブ)「Last☆Shine」を敢行、驚くべきスピード解散を遂げた。そのままチームは現地で解散となり、すぐにプレイヤーたちの話題からも消えていき、今では知る人ぞ知る伝説となっている(なお解散に加えて「私、普通の〈冒険者〉に戻ります!」の離職コンボを決めたプレイヤーもいたとか)。



なお、解散の理由については「音楽性の違い」「チーム内恋愛」「金銭トラブル」などさまざまな推測がなされたが、後日このエピソードを知った〈冒険者〉がてとらちゃんにたずねたところ「いやあ、アイドルなら一度はやっておきたいじゃないですか、解・散・ラ・イ・ブ♪」という答えが返ってきたとのことだ。

関連項目