「あなたにも見えるでしょ？　ツクバの夜空に輝く七つの星が！」
「星のひかりの力を借りて、悪い魔物をバッキバキのボッコボコ！　星のイリュージョニスト、シェイディ――（七秒タメ）――シェイオラ！」

　ミステリアスな美女ＮＰＣとして登場した〈漆黒の魔女〉シェイオラであったが、思わせぶりなセリフと知名度の高さが災いしたのかＢＢＡキャラとして定着してしまい、二次創作を中心に「魔（法で年齢を詐称している）女」「幻覚（ルビ：アンチエイジング）」などのネタが定番になってしまった。
　プレイヤー間でＢＢＡネタが盛り上がるなか、運営は彼女のイメージをなんとか堅守しようとしたものの、一度うねり始めた激流を留めることはできず、ある年のイベント「ツクバ七星祭」で遂に膝を屈することになる。
　このイベントはツクバの魔法学院における学園祭を模したもので、出店やお化け屋敷など、あまり殺伐としていない内容だったのだが、クライマックスでツクバの街の結界が原因不明の不具合を起こしモンスターが街に乱入。混乱するプレイヤーたちが見たものは、漆黒のレオタードに星柄マントを身に纏い、学院の塔のてっぺんに立って冒頭のセリフを叫ぶシェイオラの姿であった。
　唖然とするプレイヤーたちを前に、星屑の専用エフェクトつきで攻撃魔法を乱射し魔物を撃退した魔女は、自分がこうやって時間を稼いでいる間に結界の修復に必要な「七つ星のかけら」を探してきて欲しい、と依頼してくる。ツクバ周辺に隠されたそれらを集めて彼女に渡すと、クエスト完了となり限定アイテムがもらえる、という趣向だった。

　――その後、結界の不具合やら魔物やらは七星祭を盛り上げるための幻覚による演出だったというオチがついたが、「星のイリュージョニスト」の雄姿――艶姿――惨劇――はプレイヤーたちの精神とシェイオラのイメージに修復不能な傷を残し、賛否両論あったものの開き直った運営によって毎年の恒例イベントになってしまった。〈大災害〉後の混乱によって１年目の「七星祭」は中止されたが、彼女の再登場を願う一部〈冒険者〉たちは、次こそリアルにその姿を拝めるのではないかと密かな期待を寄せているという。