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エリアス十二の難業 《エリアスじゅうにのなんぎょう》
 「十三騎士団の最後」から唯一生還〈古来種〉エリアス・ハックブレード。
 彼を見出したのが〈人間台風〉〈七陸走破〉などと称されるカナミであったため、彼の道中には当然のように幾多の苦難が立ちはだかる。この記事では、英雄エリアスが被った迷惑――英雄の挑戦を紹介する。

難行その一
 アルスターの古戦場でカナミに掘り起こされたエリアスは〈赤枝騎士団〉の壊滅を知る。カナミの発案で〈弧状列島ヤマト〉を目指すことになったのだが、カナミは〈白崖海峡〉を泳いで渡ると言いだして、なだめるのに途方に暮れるエリアス。
 エリアスは〈ロンデニウム〉で船を調達しようと「スライムの良質な液でプールを満たす」クエストに挑戦する。クエストそのものは達成したものの、既に〈アルスター騎士剣同盟〉は崩壊しており、船は調達できなかった(結局泳いだ)。

難行その二
 結局、気合で海峡を駆け抜け〈ガリアン武国〉に到着した二人は〈花の都〉(ヴィア・デ・フルール)でソロ狩りをしていたコッペリアと遭遇、仲間に加える。
 〈七女王国〉への入国を拒否されるが、国境でもあるサーバー境界に食堂を建てて旅人を食い殺していた双頭の女巨人エーレクトラとアルキュオネ討伐を条件に許可が得られるところまでこぎつける。
 なお、女巨人はカナミと出会った瞬間胸の大きさを巡って仲間割れを始めたので、難なく下すことが出来た。歓待を受け、その翌日に通過することに。

難行その三
 〈七女王国〉に入り、〈城壁都市ホーエン〉を東西に分けて争っていたふたつのギルドを拳と蹴りによる説得で和解させたカナミだったが、〈ハトウィ炭鉱〉に巣食う蜘蛛の魔物を退治市に行った先で囚われの身になってしまう。
 炭鉱は幻獣〈蜘蛛魔女〉を奉じる亜人間種族〈蜘蛛人〉の巣窟と化していたのだ。
 罠が張り巡らされ迷宮のようになった炭鉱の中、エリアスはコッペリアと共に奮闘し、糸でぐるぐる巻きにされたカナミを救出することに成功した。

難行その四
 アオルソイで五百体の〈灰斑犬鬼〉を駆逐する。

難行その五
 〈セケック村〉を再出発し、亜人間種族が支配する地域〈青の都〉に差し掛かった一行だったが、カナミのホットパンツ〈花蟷螂の闘着(下)〉が〈黒狸族〉に盗まれた。なにしろ履いていても腹が隠れないので、腹の黒さが身分に直結する彼らにとっては垂涎だったのだ。
 〈黒風山〉に棲む黒狸族の首魁、黒狸大王は盗んだホットパンツの威光をもって〈青の都〉に群雄割拠する亜人間種族を糾合しようと企んでいた。
 エリアスは一計を案じ、レオナルドが苦難の末に集めてきた七つの材料を元に霊薬〈妖精王の白インク〉を練り上げる。披露の場で黒狸大王の腹を白く染めて面目を潰し、ホットパンツの奪回に成功する。

難行その六
 一行は、〈雪蓮山脈〉の玄関口〈カイパル山門〉で〈雪魔狼〉に襲われていた〈大地人〉の老人を助ける。大怪我を負った老人に代わり、北にある〈雪兎の村〉に住む孫娘への届け物を託された一行は、カナミの「最短距離だよ!」という一言で雪蓮山脈を一直線に北上。
 毛糸のパンツを孫娘に届けた一行だったが、村では家畜の病気によって未曾有の食糧難にあった。村に合ったスイカの種にコッペリアが陽光の祝福を与え、痩せた土地でも育つスイカの畑を村人総出で作ることになった。エリアスは鍾乳洞におもむき苦土石灰を入手、土壌改良に一役買う。畑は「聖女様の畑」と名付けられ、6435個のスイカが収穫された。カナミは冷凍スイカバーで大喜び。

難行その七
 〈髑髏砂漠〉横断のために〈ツルクールのオアシス〉に立ち寄った一行だったが、そこにあった大河が流砂の河に姿を変えていたため、オアシスは砂漠に飲み込まれかけていた。
 原因は河の源流に棲みついた大亀の幻獣〈砂亀妖〉だった。淵に潜んで砂を吐き続け、水を独占するこの魔物を、〈湖の貴婦人〉の助力を得たエリアスと〈水棲馬〉を駆るレオナルドのタッグで撃破。砂大河は水の流れる清流へと姿をもとに戻した。
 しかし〈髑髏砂漠〉の暑さを嫌がったカナミは、そのまま龍族の群生地である〈シャンマイ山脈〉縦断という暴挙に出る。
 
難行その八
 〈狼君山〉で悪の仙女に誑かされつつも、その魅了の呪いを打ち破り、天仙神君クラスティと武を競う。

難行その九
 〈草原の都〉に逗留することになった一行は、婚約披露宴に招待された。新郎は十八歳の青年、新婦は十五歳の少女が三人。ところがこの青年、変わり身の早さで知られた男。新婦となる少女たちから話を聞いたカナミは新郎に詰め寄り、手にしていた骨付き肉を奪い取って懇々と説教を開始する。
 レオナルドが慌ててカナミを取り押さえたことで、大事には至らなかった……と思ったものの、実はカナミが取り上げた骨付き肉に問題があった。この地方では新郎が無能でない事を示すために新婦と羊の脛肉を奪い合う儀式があり、新婦はかなみと結婚することになってしまったのだ。
 エリアスとレオナルドは、カナミから骨付き肉を奪い返すためのスパルタ特訓(レオナルド曰く、軍曹式だとか)を青年に行う。この試練のせいで一ヶ月も足止めをされてしまった。なお、取り戻した秘策は、武力ではなく、羊よりも美味しい魅惑の軍曹式チキンでカナミの意識を羊肉からそらすことだった。

難行その十
 旅の中で魔物から逃げるために天幕を失った一人の大道芸人。彼は新たな天幕を手に入れるため〈草原の都〉の郊外にある屋敷跡に住み着き、街に出ては大通りで芸をする日々を送っていた。ところが日に日に衰弱していく。彼は屋敷の裏にある沼から謎の声に招かれているのだった。
 そんな話を聞きつけたカナミが幽霊退治と盛り上がったため、一行はその屋敷に向かった。探索の結果、屋敷に幽霊などおらず、招く声は沼に大量発生していた〈猛牛蛙〉の大合唱だと判明。これを駆逐し、大発生を防ぐためにエリアスの魔術で沼の水を浄化した。

難行その十一
 〈冬草夏虫〉という幻獣がいる。蝉の幼虫に似た虫の姿をしており、主に茸に寄生する。数十年に一度大発生するこの幻獣が〈歩き茸〉に寄生したため、草原は目的もなく走り回る〈歩き茸〉で溢れかえり、一躍大パニックに陥った。
 この幻獣は妙薬の原料ともなるため〈楽浪狼騎隊〉主導で捕獲作戦が行われ、エリアスたち一行も参加したのだが、その作業感からあっという間もなく飽きたカナミの発案により、チーム分けをしての捕獲数比べという事に。退治でなく捕獲という話ならば|誓い《ゲッシュ》にも抵触しない。双子の少年イーオン&アルエンと組んだエリアスの一人勝ちであった。

難行その十二
 〈狼君山〉で得た〈騎乗用大型狼〉に「ラファちゃん」と名付けて可愛がるカナミと、その命名に異を唱えたいレオナルド。二人の口論はどっちの狼がより可愛いかという方向に逸れた挙句、〈楽浪狼騎隊〉をも巻き込んだ猛レースとなってしまった。広大な草原、精霊樹の森、死霊の沼地、蠍の岩砂漠、醜豚鬼帝国といった難所を駆け抜けるレースの中、心情的にカナミもレオナルドも応援したいエリアスは、レース参加を見送った結果、何故かクラスティと組んで実況と解説を行うことに。
 実況しているだけなのにレース参加者を次々とリタイヤに追い込むクラスティを止めることも出来ず、結局レースの勝者は従者精霊の花貂になる。