ログ・ホライズンに登場するたくさんの人物にいろいろなキーワード。
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考えておりますので、応援をよろしくお願いします!

てとらちゃんのウロコ探し 《てとらちゃんのウロコさがし》
 てとらちゃんはカワイイうえにまじめなのでどんなクエストにも正面から挑むのだ!
 これは悪名高いクエスト〈アマルドールのウロコ探し〉に挑戦した一人のアイドルの足跡である。

 購読しているゲーム雑誌に掲載されたバージョンアップ情報で〈ロンドールの羽付き靴〉の見た目にハートを打ち抜かれたてとらちゃんは、なんとしてもこの〈秘法級〉アイテムを取得することを決意する。待ちに待ったクエスト実装前日にはクエストNPCである鍛冶師パンドームの近くでログアウトする気合の入れようだったが、バージョンアップ当日の宿題の量が多くて帰宅即ログインに失敗。
 宿題を片付け、クソ長いバージョンアップ処理を終え、てとらちゃんがログインできるころにはクエスト受注の順番待ち(該当NPCに一度に話しかけられる人数には限度がある)の列ができていたのでしかたなく列最後尾に並ぶ。人が集まりすぎて動作が重くなり、何度か回線落ち→ログインして並びなおしを繰り返す。受注できるころには日が変わっており両親に叱られた。

 なんとかクエストを受注したてとらちゃん。クエストアイテムとして指定された〈亜麻色オオトカゲ〉のウロコを1000枚集めるため向かった〈アマルドールの河口〉には、トカゲの3倍ぐらいのプレイヤーがつめかけており、狩られる速度に再出現が間に合わない。激しい取り合いから口喧嘩やPKに発展する騒ぎのなか、てとらちゃんは数時間かけてウロコ50枚をゲットするが、先の長さに気が遠くなる。

 翌日以降も狩場は混雑を極めていたが、てとらちゃんはくじけずウロコ集めに奔走する。獲物の取り合いで口げんかになりそうなところに割って入り、パーティーを組んで狩りの効率化を図ったり、ヤケになってPKを始めたプレイヤーを臨時チームで撃退したり、すでにトカゲと戦うより誰かと交渉したりPKを殴ってる時間のほうが長くなってるような有様だったが、それでも1週間をかけて1000枚のウロコを集めることに成功する。
 すぐにでもパンドームのところに行きたかったてとらちゃんだったが、パーティーを組んだ仲間が1000枚集めるまではと思い、さらに数時間狩りを続けたためまたも両親に叱られる。

 いよいよ羽つき靴とご対面だ、と。鼻歌交じり、というよりも声に出して歌いながら上機嫌でパンドームにウロコを納品するてとらちゃんだが、ここで「ウロコ1000枚は材料の一部」と言われ思わず画面の前で「は?」と声を上げる。しかしログには無常にも「クエストが更新されました」の文字が。

 なお、これはこのクエストにおいてまだまだ序盤である。このあと、さらなる材料を求めて西日本エリアを中心にダンジョンやフィールドを走りまわらされることになる。〈センバの狸穴〉では素材を巡って〈黒狸族〉とダンス対決(「踊り」のエモートマクロ連打で指が痛かった)、〈黄金竜シュテイガー〉の狩場でドラゴンの影におびえながら素材狩り、セトの群島地帯でランダムポップする宝箱を探して延々船をこぎ続ける(途中で寝落ちして〈海竜〉に絡まれること数回)など、当時としてもうんざりするような作業を繰り返して、てとらちゃんは鍛冶師パンドームのところに戻ってきた。
 そして無情にも告げられた「千枚のウロコは試作品の実験で使い尽くし、本番のためにはさらに3000枚のウロコが必要だ」という事実。そして「クエストが更新されました」のログ。
 またウロコである。しかも前回の三倍。さすがのてとらちゃんもこの時ばかりはそのままPCの電源を落としてフテ寝した。

 しかし訓練されたMMOのプレイヤーにとって、こういった展開は稀によくある話だ。それ故に、てとらちゃんはもう一回頑張ってしまうのである。
 今度はウロコ3000枚。すでにアマルドールのクエストについてはその過酷さの話が広がっており、実装当初ほどの混雑は見られなかった。現地で同様に三千枚チャレンジとみられる冒険者に声をかけ、パーティーを組んで、少人数でエリア中のトカゲを全滅させる勢いで狩り続ける。それでも100%ドロップではない上に、3000枚×パーティー人数だけの枚数を集めるのは並大抵のことではない。休日を一日二日つぶしたぐらいでは到底たりないのだ。そして、狩りの間中、圧倒的作業感が眠気とともにプレイヤーたちのやる気を削る。ゲームとは何も関係ないことをひたすらしゃべり続けたり、歌でも歌ってないとやってられないと、パーティーの仲間たちは一日中歌を歌ったり意味不明なことをエリアチャットで叫び続けながら狩り続けた。狩場で結成した臨時パーティーではあるが、この狩りの間は奇妙な連帯感が芽生えていたという。(後にこの光景が「毎週アマルドールの岬で奇声を上げる集団がいる」とゲーム内コミュニティで話題になったり、〈大災害後〉には〈大地人〉の間でホラーな伝承として伝わっていたのは秘密である)

 こうして2週間をかけて集めた3000枚のウロコ。しかし、本当の絶望はここからだった、とてとらちゃんはのちに語っている。
 ウロコを納品し、パンドームに「次の日まで待ってくれ」(この手のクエストでは、クエスト進行のためにリアルで日をまたぐことも珍しくない)と言われたてとらちゃん、久しぶりのうきうき気分で宿題を片付け、ログインして見たものは、土下座するモフール姉妹の姿だった(ちなみにこの時に特殊エモート「モフールの土下座」を習得できる)。
 子供っぽくて珍しいもの好きなリトカ=モフールが、預かった3000枚の〈アマルドールのウロコ〉を、旅の行商人(を装った黒まみ族)の口車に乗せられ、「右端が左についていて、左端が右についている世にも珍しい魔法の棒」と交換してしまったのである。リトカから没収された件の棒はてとらちゃんに渡されるのだが、ほんとに何の特徴もない木の棒である。(なおこの棒は今もてとらちゃんの個人ストレージに保存してある)
 そしてまたも「クエストが更新されました」のログが流れる。

 5分ほど固まっていたてとらちゃんだが、「ま、まあ、一度集められたんだからもう一回集めればいいんですよ。ボクはくじけないので」と独り言を言って再びアマルドールの岬へと向かった。当然、現地には同様の展開で死人のような目をしたウロコ狩りの仲間たちの姿。「ばーか!ばーか!リトカのバーカ!」てとらちゃん作詞作曲の「リトカのうた」を全員でがなり立てながら、てとらちゃんと仲間たちは再びウロコ狩り地獄へと身を投じた。
 こうなると慣れたもので、親の顔より見たトカゲをポップする瞬間に釣り、叩いている間に次を釣る(すでに出現ポイントは体が覚えている)。トカゲ狩るべし慈悲はない――完成された流れ作業めいた動きで次々と殲滅していくパーティーの姿がそこにあったが、それでも再び目標のウロコを集めるのには10日の時間がかかった(なお寝不足で遅刻しそうになった回数3回)。

 しかし、地獄はまだ終わらない。今度はウロコの納品直後に、素材を受け取ったレリア=モフールがなぜかちょうどよく乱入してきた暴れゴルゴンの群れに跳ね飛ばされて、素材はカゴごと鍛冶屋の溶鉱炉に飛び込んでしまう。(なおゴルゴンはてとらちゃんが退治した)
 そしてまたも「クエストが更新されました」のログ。
 もちろんウロコは焼失、全ロストである。「なんなんですか馬鹿なんですかせめてシュワちゃんみたいに親指分ぐらい残ってもいいじゃないですかーッ!!」と叫んでみたがお父さんに怒られただけであった。

 ここまで来れば意地である。涙目になりながらも今度は1週間でウロコを集めきったてとらちゃん、三度目の正直とばかりにウロコを叩きつけるが、今度はリトカの飲み食いの借金のカタにウロコは没収。

「クエストが更新されました」

 そして1週間後、再び3000枚――都合13000枚のウロコを集めきったてとらちゃんは、クエスト実装から実に二か月近い時間を経て〈ロンドールの羽根つき靴〉を入手することとなった。このときのてとらちゃんの表情はまるで「悟りを得た聖者」だったと言われている。

 なお、その1週間後に運営より告知があり、
「クエスト難易度緩和のため、〈アマルドール〉の出現率上昇、および出現エリアを拡大しました」
「〈アマルドールのウロコ〉のドロップ率上昇し、さらにウロコを複数入手できる〈アマルドールの甲殻〉をドロップするよう修正しました」
「取引不能だった〈アマルドールのウロコ〉を取引可能とし、マーケットでも取り扱えるように修正しました」
 とクエストが大幅に緩和された。
 それを見たてとらちゃんがパソコンの前で崩れ落ちたのは言うまでもない。